経済企画庁が88年1月に発表したところによれば、85年10月から87年1月までの2年3ヵ月の期間で、円高差益の総額は29兆4500億円。どんなふうに計算したものなのか。企業は、この間、円高になる前の1年間と同じペースで輸入をしたとする。それに対する支払い額は円高のおかげで、前より少なくなっている。その節約額を、発生したはずの円高差益とみなす。そういう見方で計算したものです。ざっと30兆円に及ぶ総額は、原油関係(原油安と円高)が11兆7100億円、原油以外の輸入品の円高差益が18兆2100億円だと言います。そして、そのうち約7割に当たる20兆5100億円か、販売価格の引下げによって買手の企業や消費者に還元されたと、経済企画庁は見ています。しかし、メーカーは十分に価格を下げているか。輸出した商品が日本に逆輸入されて国内価格よりも安く売られている状況からすると、大いに疑問ですね。
ハイテク産業の地図も変わりつつあります。かつてのアメリカのハイテク基地は「シリコンバレー」(カリフォルニア)や「ルート128」(ボストン)でした。しかし、テキサス州オースティンの「シリコンヒルズ」(コンピュータ、半導体の企業が集中)、フロリダ州オーランドの「レーザー・レーン」(レーザー光線、電子)、サンディエゴの「ゴールデン・トライアングル」(バイオ、通信)、中西部のミネアポリス・セントポールの「メディカル・アレー」(医療機器、ヘルスケア)、東部の「プリンストン・コリドー」(バイオ、通信)、などの新興のハイテク基地が誕生。内陸部にも立派なハイテク産業を持つ地域ができました。また為替レートも、85年以降ドル安に向かったため、輸出部門がドル安で息を吹き返し、リセッション期間中も経済を支えてきたことも、内陸部が相対的に伸びた理由です。この他、農産物やエネルギーなどの一次産品価格の回復も内陸部に有利に働きました。以上みてきた通り、アメリカの地域構造は80年代に入りバイコースタル・エコノミー化、それが89年頃より“脱”バイコースタル・エコノミー化していったのですが、この節の締めくくりとして今後の地域構造を簡単に展望してみましょう。
今、自動車部品業界では、付加価値構造の再構築、つまりサプライチェーンの再構築が猛烈な勢いで始まっているのだ。会社の存在価値、その構造そのものが問われている。単なるコストダウンや品質改善活動では生き残れない。細分化され、主体性を失った日本の系列型企業の未来は大変心配だ。日産系最大の部品メーカー、ユニシア・ジェックスの任田晃一郎社長はこう悲鳴をあげる。「ダメや。今のうちの規模は中途半端で全然力不足や。こんな規模では単独で自己完結できん」(週刊東洋経済一九九九年十月十六日号三八頁)。グローバル化、モジュール化、情報革命などに対応し、企業を創り変えることのできる企業だけが勝ち残る。カルソニックとカンセイの合併、タチエスと富士機工の提携など、いくつかの動きは始まっている。